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2011年2月

2011年2月26日 (土)

春に降る雪21 第五章 回想2


僕が目を覚ましたのは、ベッドの上だった。
白い天井。白いシーツ。白い壁。
まるで雪みたいに。
「…ここは?」
起き上がろうとすると、軋む全身が悲鳴を上げた。
「つっ!」
よく見ると、全身に包帯が巻かれている。完全にミイラ状態だ。
えーと、ここは病院?
よく思い出せないけど、何で僕はここに?
がらっ
タイミングよく扉が開いたので、思わずそっちを向く。
「お、起きてるじゃんフユキ!元気か?」
元気だったら、こんなとこいねぇよ。
ようやく、状況が飲み込めてきた。ここは病院。僕は怪我して入院している。真吾が今しがた見舞いに来た。
「いやぁ、びっくりした、びっくりした。まさか、フユキが学校で暴力沙汰なんてなぁ」
勝手に座り、自分が持ってきたリンゴをかじる真吾。自分用かよ。
「暴力沙汰?」
「なんか詳しくは公開されてないけど、大変だったみたいだぜ?マスコミっぽい野次馬もわんさか来てたし。お前は怪我してただけだろうけどさ。まったく気楽なもんだぜ。フリーダム!」
意味がわからない。
「えーと、よく覚えてないんだけど、詳しく教えてくれないか?」
素直に聞いてみた。
「マジで!むしろこっちが聞きたいくらいだっつの。情報は全部隠されてんだよ。大人たちの陰謀ってやつ?って、俺らももうハタチだし!大人だし!アダルツ!」
ふ、複数形!
「そう、てなわけで、根も葉もある噂がいろいろ流れてるくらいだな。やれ喧嘩だの、殺し合いだの、暗殺だの、逢引だの、まぁ、そんな感じだ。…お前と日々井准教授、できてたのか?」
「…」
何で、そうなる。
心外にも程があった。
というか、日々井准教授?
僕は、准教授に会ったのか?
「まぁいいよ。それで友達やめたりしねぇからさ。俺、優しっ!カインドネス!」
親切かよ。
「まぁ元気そうで良かったぜ。じゃあな、俺バイトだから!」
結局リンゴを独りで全部食べ終えて、真吾は帰っていった。

「こんにちは」
次の日に僕を訪ねてきたのは、黒いスーツを着た女性だった。20代後半くらいだろうか。落ち着いた物腰からすると、30代かもしれない。化粧は薄く、鋭く切れ上がった目が特徴的だ。
「私は、こういうものです」
僕が挨拶する前に彼女が差し出した名刺には、G大学理事長秘書・荒弾紘子、と書かれていた。
「早速ですが、理事長より貴方にお渡しする書面を預かってまいりました」
彼女はそう言って、白い封筒から一枚の紙を僕に差し出した。
「これは…?」
「見ての通りです」
退学届…?
「えっと、どういうことか説明してもらえますか?」
僕の反応を予測していたかのごとく、眉ひとつ動かさずに、彼女は説明を始めた。
「ヒノさん…先日、旧研究棟にて何があったのか、覚えておいでですか?…いえ、お答えいただかなくて結構です。貴方は、先日の旧研究棟での出来事を覚えていない。そういうことにしていただきたいのです」
「な…」
どういうことだ?
霧の向こうに薄れた記憶を、必死に辿る。
旧研究棟…?
そこに、僕が行った?
何故…?
頭が痛む。何かを拒むように。
「大学としては、今回の件を公にしたくないと考えます。幸い、マスコミ関係には記事を公にするのを自粛していただきました。もちろん、警察も介入しません。あとは…貴方次第です」
警察…。
警察沙汰になるような暴力事件。
それに、僕が関わった?
「…受け入れかねます。そんなことは」
あえて、つっぱねてみる。反応を見るためだ。
何があったのか、少しでも情報が欲しかった。
「…わかりました」
だが意外にも、彼女はあっさりと引き下がった。
それほどでもない、ことなのか?
「もし、貴方がこれ以上の要求をしようというのなら、それでもかまいません。ですが、お薦めはできない行為ですね。1日、ゆっくりと考えてみてください。私達は、警察の介入も押しとどめられるということを、ゆめゆめお忘れなきよう…。それでは私はこれで失礼します」
彼女は機械みたいに正確な、お手本通りの仕草で、病室から出て行った。
警察の介入を止められる。
つまりは…いつでも僕を消せる、ということか。
僕の手元には、一枚の退学届。
自主的に退学したと。
そういうことにしたいらしい。
僕は、何があったか覚えてもいないというのに。
どれだけ記憶を探っても、その断片は、掴んだと思ったら雲のように消えてゆく。
ちくしょう。

雪。
雪だ。
雪が、降っている。
でも、地面に落ちた雪は、何故か赤く染まってゆく。
血の色みたいに。
そっと雪に触れてみる。
…熱い。
『フユキくん』
声が、聞こえる。
誰の、声。
『さよなら』
え?
キィィ!
ブレーキ音。
ヘッドライト。
待って。
待って。待って。待ってよ!
僕を、置いていかないで!
熱い。
冷たい。
…暖かい。
『…ルカ』

夜明けとともに、目が覚めた。
体中から、汗が噴出している。気持ち悪い。
「ちくしょう…」
何も、思い出せなかったけど、
何かを失くしたのは、わかった。
何かを守れなかったのは、わかった。
だから、僕は、ここにいる。
ふてぶてしくも。わざとらしくも。
息をしている。
振りをしている。
小さく、
涙を、噛み殺した。

「早速ですが、お返事をいただきにあがりました」
丁寧なノックは、やはり荒弾秘書だった。
僕は無言で、自筆の退学届を差し出す。
「ありがとうございます。賢明な判断、理事長も喜びます」
やはり眉ひとつ動かさず、彼女はそれを受け取った。
僕は、一言も喋らない。頑固な貝みたいに。
「こちら、小額ではありますが、退学手当てです。お納めください」
秘書の差し出した封筒は、それなりの厚みがあったが、僕は黙って首を振った。
「そうですか…わかりました。貴方の意思を尊重します。それでは、私はこれで失礼します」
昨日と1ミリの狂いもない動作で、彼女は病室を後にした。
何が、『意思を尊重』だ、ちくしょう。
僕には、何の力もないことを、痛感させられた。
守る力も。
与える力も。
拒絶する力さえ。
顔を伏せていると、再び病室のドアが開いた。慌てて目尻を拭う。
「はーい、ヒノさん検診の時間ですよ~」
入ってきた看護士さんに、涙は見せずに済んだ。

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2011年2月15日 (火)

デイト&ナイト&デイ

Yuki


雪だ!

いやぁ、この間の雪じゃテンション上がらなくて、「俺も大人になっちまったな(遠い目)」なんて思っていましたが、いかんせんまだまだ子供でいられるみたいです。イエイ、イエイ!どうせならこのくらい降ってもらわんと。

とか言ってられるのも、僕が九州っ子だからですね。雪国の人から白い目で見られそう…降らんでいいと。

そうしてはしゃいだ挙句、上野発の夜行…じゃなくて、上の写真みたいなことしたくなっちゃうんですね、これが。

突然消えた足跡…まさか犯人(?)は宙に浮いて消えたというのか!伝説の亡霊騎士(ゴーストナイト←犯人名で)のように…

…みたいな。え、金田一の読み過ぎ?

そんなこんなな雪の日…千葉でカホン叩いてきた帰り道でした~お客様は寒い中無事帰れたのでしょうか!?次週・「雪に消えたあなた」乞うご期待!(なんのこっちゃ)

ブログネタ: 【写真ネタ】あなたが目にした「雪」の写真を見せて!参加数拍手

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2011年2月14日 (月)

春に降る雪⑳ 第五章 回想1



3階の廊下は、薄暗く、静かだった。機能していない蛍光灯が、無表情に天井に並べられている。スイッチを探したが、階段の近くにはないようだ。仕方がないので、暗いままの廊下を僕は歩いた。
幼い頃探検した、放課後の学校を思い出させる廊下は、奥の方で右に折れていた。放課後、人気がなくなると、途端に恐怖の空間へと早変わりする学校。消火栓の赤い光だけがぼんやりと点って、すごく不気味だったのを覚えている。
廊下を進んで、角を曲がると、ドアのすき間から明かりが漏れだしている部屋があった。
あれだ。
直感でそう思い、足音を殺して忍び寄る。
ドアの横にプレートがあった。『日々井落陽』間違いない。日々井准教授の部屋だ。
ドアのすき間から、そっと中を覗いてみる。
中にはハルカの姿も、准教授の姿も見えない。物音ひとつなかった。
思い切って、僕はドアを開けた。
…もぬけの殻だ。煌々と部屋を照らす明かり以外に、存在を主張するものは何もなかった。
と、なると…どこだ?
僕は部屋を出て階段へ戻ることにした。
廊下を歩き、角を曲がる。そこで、僕は思わず立ち止まった。見覚えのある白衣姿が、目の前を歩いている。
暗くてよく見えないが、あれは…おそらく日々井准教授だ。階段の方からこちらへと、暗い廊下を歩いてきている。
だが、彼は独りで、ハルカの姿はない。
近くまできた彼に声を掛けようとして、僕は戦慄した。
彼の顔に貼り付いていた、笑みに。
その、歪んだ口元に。
なんだ、この不快感は?
なんなんだ、この不安感は?
僕に気付いた彼が、立ち止まった。眼鏡の奥から、鋭く冷たい視線が飛んでくる。
視線が、
交錯した。
「…」
声が、出せない。
「君は…」
准教授は、視線を逸すことなく、言った。
「…誰だ?」
「僕は…」
何とかそれだけ言葉を絞り出したが、二の句が告げない。
「…」
興味を失ったように視線を外すと、准教授は、何も言わず僕の横を通って、部屋に戻っていく。
「女の子を」
僕は振り返って、叫んだ。
「見ませんでしたか?」
准教授は一瞬だけ立ち止まり、再び歩きだした。振り返ることなく。
僕は再び振り返ると、階段へと急いだ。
ハルカは…?
日々井准教授の、あの表情。
なんだか、胸騒ぎがした。
階段を一段飛ばしで駆け上がる。上は屋上になっていた。
暗くなり、外灯に照らされた屋上には、雪が舞っていた。息が白い。
綺麗だな、と一瞬だけ、場違いなことを思った。
ハルカは屋上の真ん中で座り込んでいた。僕に背中を向けているので、表情は見えない。
右手に何かを握っているように見えたが、暗くて何かはわからなかった。
「ハルカ…さん?」
僕は呼び掛けながら、ゆっくりと近付いてゆく。
ハルカは答えない。
尋常ではない空気。
何が、あったんだ?
あと5歩というところまで近付いて、初めて気付く。
ハルカの右手にあるもの。それは…
「なっ」
…拳銃だった。
日常にはあまりにも不釣合いな、鈍い銀色の物体。
ハルカの細い腕の先に、それはしっかりと握られていた。
「…」
僕は思わず絶句する。
そうしているうちに、彼女の右腕が持ち上げられた。意志を持った別の生き物みたいに。
その腕は、ゆっくりと、
ゆっくりと、銃口をこめかみに突付けた。
引き金にかかる指。
「ハルカっ!」
僕は大声をあげた。自分でも、どこからそんな声が出たのか、わからなかった。
そこから、すべてがスローモーションのように流れていった。
彼女がゆっくりと、ゆっくりとこちらを振り向く。悲しみと虚しさがぐちゃぐちゃに交ざった瞳。
責めるでもなく、
頼るでもなく、
怒るでもなく。
駆け出した僕は、一歩踏み出した。あと4歩。
彼女の瞳が、僕の目に焦点を結ぶ。
視線が、交錯する。
…あと3歩。
ハルカは、僕を見つけて、そして、
微笑んだ。
それは、まるで、
全てを許すような。
全てを捨てるような。
全てを受け入れるような。
それでいて、全てを失くしたような。
そんな、哀しい微笑み。
胸がしめつけられるように苦しい。
頭がぼうっとする。
肌がヒリヒリと痛い。
呼吸が荒く聞こえる。
あと2歩!
「あぁぁぁあぁあぁぁ!」
僕は叫んだ。
わけもわからず、叫んだ。
あと、1歩!
ハルカっ!
0歩!
「さよなら…フユキくん」

ぱんっ

乾いた銃声が、響いた。

耳を劈くような音に、思わず目をつぶって。
目を開けたら、僕の膝の上に、ハルカはいた。
きっと、僕と同じように目を閉じて、そのまま横たわっていた。
彼女の頭に降り積もる雪が、じわりと赤く染まってゆく。
白く、白く、白く。
赤く、赤く、赤く。
熱い。
冷たい。
…暖かい。
僕は、哭いた。
ただひたすらに、哭いた。

「…何だ、君は」
気付いたら、僕は日々井准教授の部屋にいた。ノックもせず、乱暴にドアを開けると、冷ややかな視線が、眼鏡の奥から飛んできた。
どうして、僕はここに?
うまく、思い出せない。
意識に、薄い霧のようなヴェールがかかっている。
これは、夢?
「君は、さっきの…そうか。よくわからないが、君は『例外』のようだな。ふん…まぁいい。ここは君のような一般人の来るような所ではない。さっさと立ち去るんだ」
言い終わると、彼は再びめくっていたファイルに目を落とした。僕なんて初めから存在しないかのように。
何、言ってるんだ…?
よくわからないけど…僕は。
ポケットの中で、拳を強く握り締める。
どこかで拾った、朱いヘアピンに、その手が触れた。
立ち去ろうとしない僕に気付き、彼は顔を上げた。
「まだいたのか?警備員を呼ぶぞ」
内線電話の受話器を取ろうとした彼の腕を、僕は咄嗟に掴んだ。
僕は…何をしている?
何をしなくてはいけない?
「何を…?」
言いかけた日々井の顔面に、手加減なしの右フックをお見舞いした。
ばぎっ。
嫌な音。
歯が折れたのか?
「がっ…」
日々井はよろめいたが、倒れはしなかった。口元から薄く血が垂れている。
まだ痺れている拳で、僕は二撃目を叩き込む。
が、さすがに彼も、されるがままにはならなかった。再び顔面を狙った僕の拳を腕でいなすと、がら空きになった僕の鳩尾にキックを放つ。
どすっ。
ぐっ…。
胃の中身が逆流してくるのを、すんでのところで堪える。かなり強烈な蹴りだった。
「なめるなよ…ガキが」
前のめりになった僕の顔面に、容赦ない蹴りが飛んでくる。
ばきっ。
避ける余裕もなく、僕は吹っ飛ばされた。
「何が目的か知らないが、こうなったら仕方がないな」
倒れている僕の側まで、歩み寄ってくる日々井。
立ち上がろうとするが、体が言うことを聞かない。
がっ。
「ぐあ!」
真上から振り下ろされてきた足に、なす術もなく頭を踏みつけられる。眼鏡の位置を直しながら、日々井は続けた。
「消えてもらおうか」
がっ。がっ。がっ。がっ。
連続して、振り下ろされる、足。もちろん、欠片ほどの容赦も、なく。悲鳴さえ、あげられない。
がっ。がっ。がっ。がっ。
顔、足、腕、腹。
ランダムに振り下ろされる、日々井の足。
意識にかかる霧が、色濃く、黒く、染まってゆく。
もう、ダメか…。
最早、痛みも薄れてきた。
僕は、
何で、こんなところに来たんだろう?
何で、彼に一撃を加えたのだろう?
あぁ、ダメだ。
意識が…
「…さて、こんなものか。ふん、あとは『業者』にまかせるか」
攻撃が、止んだ。
チャンス…だ。
だけど、体は言うことを聞かない。聞いちゃくれない。
動け。動け。
動け。動け。動け。動け。動け!
思いとは裏腹に、拳からは力が抜けてゆく。
からん。
握っていたヘアピンが、落ちてしまった。
あ、
返さなきゃ、いけない、のに、な。
返す…?誰に?
えーと…
微かな音に気付いたのか、電話の方へ向かっていた日々井が歩を止めて、振り向いた。
「なぜ、貴様が、それを?」
再び僕のほうまで歩み寄ってくると、僕には目もくれずに、ヘアピンを拾う。
彼は意外にも、愛おしそうに、そのヘアピンを眺めた。
「あおい…」
隙、ありだ。
上着の内ポケットに忍ばせていた、銃を取り出す。
何故そんなものを持っているのかも、わからずに。
震える手で、日々井に銃口を向ける。
彼は、黙ってそれを見下ろしている。
「それが…お前の望みなんだな、あおい」
彼は、目を閉じた。
僕も、目を閉じた。
ぱんっ。


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2011年2月 2日 (水)

死霊

2月ですね!

2月ですか?

まさか2月…!

てな感じで、鶏中毒な日々を送っております、遊です。インフルエンザにはなってません。たぶん。


よぅし、じゃあ近況報告!


1月末に船橋のホールでパーカッション叩いてきました!

その日の朝コンタクト(ハード)入れようとしたら、割れ(ヒビが入った感じ)ました!(泣)

でもそれしかなかったので仕方なく入れて…

本番中ずっと目に違和感があったという…

何はともあれ楽しいコンサートになり、良かったです。皆様ありがとうございました!


今、小説「死霊」に挑戦しています。

「しりょう」じゃないですよ。「しれい」です。

ものすごーく簡単に説明すると、めっちゃ難しい話です。

3冊中1冊読んだんですが、何がなにやらよくわからんとです。

最早修行と思って読んでます。うーむ。


カンソウが半端ないですね!あの泣きのギターソロ…ってちがーうっ!!(ひさびさ独りノリツッコミ)


そろそろ連載小説(笑)もクライマックス…なのか?本当にそうなのか?わからねぇ…まぁお楽しみに。


寒さもそろそろクライマックスかなぁ?

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